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「風通しのいい木の家をつくる」の2回目は、通り過ぎる風を上手に室内に誘い込む方法を科学してみます。
▼ 「厚い」「涼しい」は熱の足し算。引き算。
「今日は暑いなあ」「昨日より涼しいね」なんてこと、よく口にしますよね。
ところで、ふだん何気なくつかっているこの「暑い」「涼しい」って、一体どういうことなんでしょう。
これらの言葉に置き換えられているのは、
環境のある条件に適応しようとしている私たちの体の状態や体感ではないでしょうか。
さて、この私たちの身体。触ってみると温かかったり、意外にひんやりしていたり。
でも、ご存知のように体温は一定しています。
考えてみれば、身体って、適度な温度を保っている温熱の塊なんですね。
私たちは、知らず知らずのうちに身体を取り巻く環境と熱のやりとりをして体温の調整をしているのです。
風に吹かれたり、アルコールで皮膚を消毒したりして、
身体から熱が奪われると「涼しい」、さらに熱量の放出が大きくなると寒さすら感じます。
「暖かい」「暑い」は逆に熱の放射などを浴びて、体表面に受ける熱量が増えていく状態なのです。
この2つの状態を考え合わせると、「暑い」ときには、受ける熱量を減らし、
奪われる熱量を増やせば「涼しい」になるのです。
高温多湿の日本の夏。心地良く過ごすことができる家とは、強い日射を遮り風通しをよくした家なのです。
深い庇などで光と熱を遮り、心地良く風が通り抜ける日本古来の住まい。
そこには、風を利用して室温や体感温度を下げる知恵があったのです。
▼ 風をコントロールして、涼を採り、熱を逃がす。
最近は断熱性、機密性を高めた住まいが増え、
それらを積極的に活用したパッシブクーリングの建築が注目を集めています。
そのキーワードは4つ。
①涼気を採り入れる、採涼
②熱気を排出する、排熱
③冷気を貯える蓄冷
④熱気を防ぐ、防熱
この4つを組み合わせる匙加減が暑い夏をしのぎやすくし、一風の涼味を加えます。
夏の蒸し暑さでは指折りの京都。
その町家は、調べてみると、こうした要素を巧みに採りいれた住まいであることが知られています。
4つの要素のなかでも、日本の風土を踏まえて柱となるのが①採涼と②排熱であり、
それらの熱の出し入れをコントロールするのに欠かせないのが「風」です。
「風」には自然の風と人工の風がありますが、ここでは自然の風が通る事を通風とします。
風通しがよいと①採涼と②排熱の効果が高まるのですが、では何がどう変わるのでしょうか?
大きく分けると次の2つです。
ひとつは、室温が外気温に近づく、あるいは室温が下がること。
暑い室外の温度に近づくなんて、とんでもないことだ。
それでは逆効果ではないか。そう思われるのも不思議ではありません。
でも、日差しを受けた家はその熱を少なからず室内に放射します。
窓からばかりではなく、壁から、天井からも。
マンションなど建物の最上階では天井の焼きこみ現象が見られ、その下の不快感はたまらないものです。
なにしろ頭上に発熱源。いってみれば巨大なコタツの中にいるようなもので、室温は外気温よりずっと高いのです。
そういう場合は、温度の上昇した壁や天井に風を這わせ、熱を吐き出させる方法を取ります。
また、室温より温度の低い空気を取り入れることも、有効な手段です。
通風のもうひとつの方法は、身体の表面熱を奪い皮膚温度、体感温度を下げること。
これについては、通風の有無が快適感をも左右することが実験結果からわかっています。
方向といい、強さといい、風は勝手気ままに見えますが、
季節により、また地域、時間帯によって風の吹く方向や強さには、傾向があります。
そうした家に向かいくる風、周囲に流れる風をどう採り入れるか。
また、暮らしに悪影響を与える風をどう防ぐか。それらの仕掛けや工夫をご紹介します。
▼ あの手、この手、からめ手。流れる風は一筋も逃がさない。
風通しのよさを測る目安に通風率があります。
室外の風速と室内に流れる風の速度を比較したもので、その割合が高いほど風通しがいい。
仮に室外の風速が毎秒2mで室内の風が毎秒1mなら、速度が半減しているので通風率は50%となります。
さて、風の吹く方向と風の採り入れ口、窓の角度との関係を通風率で測ってみると、
言うまでもなく、通風率は風の向きと同方向(風向きと直角)の窓がもっとも高く、風向きと平行になるほど低くなります。
体験的にそうとはわかっていても、それを許さぬ住宅環境や敷地の事情があるもの。
しかし、打つ手はあります。窓など開口部が風向きに対して斜めあるいは平行の場合、
風を開口部に誘導するように袖壁やフェンスを設けたり植栽を施すことです。
袖壁・庇による通風路のちがい
柚壁や庇を設置することにより、通り過ぎる風をうまく採りこむことができる
また、風の性質のひとつに、建築物に当ったとき風は建物に沿って上向きに流れやすいことがあります。
建築物の高さが高くなるほどそうなりやすく、風は上の階になるにつれ急角度に侵入、
下の図左の2階、3階のように高い位置を保ったまま天井を沿い、身体に触れることなく流れ出ていきます。
より上方へと流れる風を人の居る場所まで押えるには、
下の図右のように窓下にバルコニーのような張り出しがあると効果的です。
また軒や庇にも同様の効果があります。

都心部の住宅地では、窓が採光や眺望のための「はめ殺し」にせざるをえない周辺環境もあります。
住まいに当たる風速は上空ほど速い。
それに着目した通風方法に天井の頂部に通気口を設ける方法があり、
特に住宅が密集する地域では有効な手立てと考えられます。
▼ 風は冷やして、もっと涼しく。緑をくぐらせ、水面を撫でるがごとく。
夏の日中、陽炎ゆらめくアスファルト路。そこを歩くと、路面からの熱波にむせ返りますね。
こんな状況で風に吹かれても、さすがにげんなりしてしまいます。
ある調査と試算によれば、気温32℃、路面温度55℃で毎秒0.5mの、
いわば熱風に吹かれた人の体感温度は33℃、気温を上回るのだそうです。
こんなにも熱をはらまないならば、わずかな風さえも私たちに涼感をもたらしてくれます。
ましてや、その風の温度が低いなら・・・たとえば河川や池の岸辺などの水のほとりを、森林の木陰を渡る風のように。
先の調査に再び目を向けてみますと、舗装地に比べて、
草地の木陰では気温は2℃低く、体感温度は7℃も低いと報告されています。
大阪のように夏の昼間に西~東の風が吹く地域では、
住まいの西~東に緑繁る庭があれば暑さを和らげることができるのです。
緑の中に風を通して室内へ入れ込む、庭の池の水面上に風を這わせて室内へ招き入れる。
多くの風を望めない住宅環境でも、このような工夫を凝らすことで涼感を引き出すことができます。
最小の風で、最大の体感効果。こうした知恵が伝統として息づいた住まいが京都の町家でしょう。
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店舗や蔵、深い軒、植栽で日射の遮蔽を徹底し、熱は上方へ排出。
この住まいは、見方を変えると蓄冷の器と見ることができます。
坪庭と中庭が蒸発冷却を促し、植栽や地面、床下に貯えられた冷気が1階の住居空間を絶えず行きかい、
涼しさを保っているのです。
▼ 過ぎたる風は困りもの。寒風を遮る、強風を和らげる。
一般に風は上空ほど強くなり、逆に地表に近いほど弱まります。
それは、地形の凹凸や建物などが、風の進行を妨げる摩擦となり、風はエネルギーを奪われてしまうからです。
風の障害物が林立する都心部や市街地では風の力はさらに弱められ、
逆に摩擦の小さい平坦な田園や海岸線では風は強く吹き抜けていきます。
夏は涼をもたらす風も過ぎたるは、砂埃をもらたらし、洗濯物を飛ばす厄介もの。
ましてや冬の強い北風や山から吹き降りる颪(おろし)は骨身に染みます。
風土や家の周囲に植樹した防風林は、身を削るような風から暮らしを守る緑の堤といえましょう。
都市部で高層ビルの増加とともに周囲にビル風が頻発、防風フェンスの普及が進んでいますが、
風の強い地域でも防風フェンスを取り付ける家庭が増えているようです。
防風フェンスの遮蔽率と防風効果については意外な事実があります。
ある実験によれば、一枚板のような遮蔽率100%のフェンスより
風を60%通すフェンスのほうが効果大と報告されています。
本日はここまでです。つづく・・・。
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