2021年末にお引渡しした豊中市、平屋の家。
大きな窓から見える桜が満開になり、訪ねてきました。
引っ越し後初めての迎える春。障子もガラリも引き込で揺らぐ桜を眺めるのがいつもの楽しみとのことでした。プランでは建物面積をしっかり取ったためウッドデッキは作らず、室内側の窓辺に腰かけベンチを製作。縁側がなくとも外と繋がれるということがよく分かります。
日中の照明はすべて落として窓からの灯りだけで過ごすことができます。多少暗くてもそれがいい。影が多くあることで光が際立ち、落ち着ける空間になっています。見たい景色がより鮮明に。室内はというとお昼寝をしたくなるような暗さがちょうどいいと感じます。
住まい手様は家具選びがとても良く、数十年前の無垢家具を永く使っておられます。家も同じで、構造も仕上げも経年美化していく「陽の木の家」を選んでいただけたことが嬉しく、自然に近い家がこの地に長く残っていくことをぼんやりと想像してしまいます。
そんな家に家具はすっかり馴染んでいて、お住まいの人数に合わせたたくさんの家具があってもそれは必要最小限で、雑多なものがほとんどありません。床面がしっかり見えていて広く感じ、整然としています。
窓は予算のかけどころでもあります。頑張りが必要かと思いますが内からも外からもこの窓ひとつで印象がガラっと変わるからです。たとえこの家のように桜を望めなくても、隣地との距離が迫っていたとしても、それは木塀や緑で何とかならないか、遠くに空は見えないか、試行錯誤してプランニングをしていきます。
すると、横格子のガラリ雨戸、一枚網戸、ガラス障子、和紙障子と、いろんなシーンを楽しむことができます。
同居のお父様のお話も弾む。窓辺のベンチに腰掛け、景色を眺める日常をお話くださった。
※陽のあたる場所ではあるが窓辺なので油断はできない。足元には床吹き出し口を設けていつも暖かなリビングが計画されている
無垢の床・天井にサンドされるように食卓と灯りが空間に馴染んでいます。キッチンは行き止まりがなく回れるようにできていて、玄関とも隣接しているため、買い物帰りの動線、配膳下膳がスムーズにこなせるようになっています。
先日ようやく納品された海外の食洗器もこれから活躍されることと思います。
朝食時に桜が眺められる、考えただけでいいスタートを切れそうです。
『まるで旅館のような』と完成時に紹介していた広縁に家具が入り、このような景色となりました。
またもう一方の窓からも同じように桜と空が見え、この角度は外壁のそとん壁と製作の小庇も視界に入り、室内にいながら外観を楽しむこともできる場所になりました。
ここにサイディングや樹脂の新建材の家が建っていたら人はどう感じたでしょうか。何も正解はないのですが、きっと無機質な景色になっていたかもしれません。大工が、左官職人が、自然のままの素材を懸命に形にしてくれたので、景色に溶け込んだ新築になったような気がします。
今回は住まい心地という点ではお話を伺えなかったので、また次の機会に訪ねてみようと思います。住まい手のご家族みなさま、ありがとうございました。次は初めての夏を楽しんでください。
この家の完成写真はこちらからもご覧ください。