建築家 伊礼智「i-works1.0」 ソーラーコムカスタマイズの価格と仕様
※2021年5月、追記・更新
※2025年7月、追記・更新
i-worksのカスタマイズの価格と仕様に関する本ブログは、2019年、ソーラーコムがi-worksを全国で一番施工させていただいたときのものです。
2025年現在、物価高騰により、当時と同じような価格帯での建築が難しくなってまいりましたが、ソーラーコムのi-worksコンセプトは当時と同じように、オリジナルに忠実であることを基本に、時にはご要望に合わせてi-worksの設計作法を損なわないよう、様々なアレンジを行うことで価格のバランスを保つ考えも持ち合わせています。
それでも土地代の高い大阪という地域性を鑑みると、やはりソーラーコムの得意技である、土地価格と建物価格のバランスを、初めの計画段階から見直していくことでi-worksの建築を可能にする進め方に戻ってくるのではと思います。
その過程でたとえi-worksでの選択でなくなったとしても、i-worksの何が心地よく感じておられるのかを、ひとりひとりのお施主様とトコトン対話をして、設計作法の要素を木の家に取り入れるということも、ひとつの考え方です。
皆様がi-worksの心地よさを暮らしの中で随所に感じていただけるよう、これからも努力を重ねてまいります。
これらを参考に、本ブログをお読みいただくと何かヒントが見つかるかもしれません。
◆(以下、2019年当時のブログ、一部更新)
建築家 伊礼智氏による「i-works」は規格住宅のため、住まい手様の要望に合わせて変えられる部分とそうでない部分があります。
カスタマイズによって「i-works」が本来持つ心地良さを保てるか、要望によって崩れてしまうのかが大きな分かれ道になります。
もしも規格の間取りや仕様が要望と大きく異なる場合は、変更を重ねていくより、「i-works」の設計作法をうまく取り入れ、一から注文住宅を叶える方が結果として満足の高い住まいになります。
その上で、これまで建ててきた経験を元に変更に関する事項をまとめてみます。
建物のプロポーションは守る
プロポーションが崩れると完成された「i-works」ではなくなってしまいます。大屋根と建物のバランスあっての高い意匠性が実現されているのです。
屋根勾配は変えない
室内の希望を優先するあまり屋根勾配や棟木の位置(屋根のてっぺん)を変えてはなりません。
例えば、小屋裏のスペースをもっと大きく高くしたいからと言って、急勾配に変えるなどのことはできません。
建物形状は変えない
「i-works1.0」で言うと、4間角(7,272mm×7,272mm)の建物だからこそ完成された心地よさを崩すことになりかねません。
どうしても床面積が足りない場合は、先日ソーラーコムで完成した「i-works3.0」のように下屋を付けるなどのアレンジで対応します。
窓の位置、大きさは変えない
「窓の位置を変えないで、採光や風は大丈夫なの?」
そのために配置計画があります。光と風、近隣の視線、緑の借景を適切に設計するために、敷地条件に合わせてこの真四角のプランの東西南北を反転させてプランニングしていきます。もちろん建物の配置そのものは、人と車の動線から考えるのが設計の基本です。場合によっては無理に南側に大きな窓を向けることをせずに、北に開くこともあるのです。
例えば北のデッキは夏場とても快適です。たとえ南や東であっても、見たくないものがある方向に無理に開く必要はないのです。
思い切って南は閉じ、北に開いてみると、条件によっては見違えるほどの暮らしになることもあります。
反転プランはパンフレットにも登場していますので資料請求フォームからお問い合わせください。
こちらの1.0は隣地が迫る南側は諦め、裏山を望む東に開いた |
無理に広い家を求めなくても28坪で十分広々した暮らしができる |
1坪のお風呂、2坪の和室など、下屋で出すという選択もある |
住宅設備・仕上げ木材(床・カウンター等)は変更できる
「i-works」で定められた規格品は変えないことが望ましいのですが、そこには常に住まい手様の要望や予算があることも理解しています。
寸法・材質・デザイン・色については、部位ごとにアドバイスしています。
床の仕様
ソーラーコム標準は杉板の特一等材を使用します。
多くの方が望まれるオプションは、杉か桧の上小節材(節がほとんどない材料)です。
節は経年美化によって床が飴色になっていくにつれ気にならなくなっていくのですが、「それでも節が苦手」という方はこのようなオプションを選択されます。立ち仕事や子どもたちと寝転んで過ごされる方は柔らかく、暖かい杉をお勧めします。
壁・天井の仕様
土佐和紙を使用します。お手入れしやすいエコクロスでも構いません。本来なら、珪藻土や漆喰にしたいところですが、吹抜けまでぐるり塗るとなると100万クラスの工事は避けられません。
お勧めは寝室、玄関、洗面、トイレの小さな空間に自然素材の塗り壁を施してあげるととても快適な空間になります。最近ではi-works標準のヴィーナスコート(自然素材の塗り壁)で使用する素材を、クロスに乗せたものが登場しました。これを選択すれば塗り壁程の追加もかからずに済みます。空気を綺麗にしれくれる無垢の構造材を隠すなら、自然素材で覆うことが理想です。
キッチンの仕様
造作キッチンも豪華な設備や引き出しが増えていくと増額は避けられません。あくまでオープンの簡素な形がソーラーコム標準です。
既製キッチンの場合も、ショールームに行けば最新の便利なものがたくさんありますが、付属機能をつけていくと結果的に「造作の方が安かったよね…」ということになりかねません。スタートはお安く設定していますので、どの程度こだわっていくかは他の部位と相談しながら決めていくのがいいでしょう。
洗面・UB
i-works標準は、内装は板貼り、お風呂はハーフユニットバスですが、割り切って既製品、フルユニットバスでも構いません。
ただ、i-works標準がなぜ1坪のお風呂、1坪の洗面を木製で仕上げていくかと言うと、小さな空間を無駄なく使うことで空間が繋がり、広く感じるからです。
例えばお風呂のドアを製作にすることで天井まで枠を伸ばせます。
お風呂と洗面の空間が繋がって見え、伸びやかになるのです。
そういった心地よい伊礼設計作法を理解した上で、その先の選択をするようにお勧めしています。
杉の上小節材。空間がスッキリ収まる |
土佐和紙は手作りで薄く重ねシロが出る。家具を入れるとさほど気にならない |
造作キッチンを安く上げるコツは引き出し量と設備グレード |
空間が繋がって見えるので全く小ささを感じない |
建具・窓の寸法は守る
「i-works」が「i-works」である所以は窓の設計にあると言っても過言ではありません。すべての窓に意味があり、外から豊かなものを取り入れる大切なところです。ガラスが透明であるか擦りであるかと窓の開き方向は建設地に合わせて変更できます。
対角に抜く
真四角の建物に限らず、角に窓を設けると空間が伸びやかになります。空が見えると尚いいですね。
そうでない場合も木製の小庇を眺めて気分よく暮らすことができます。
視線を通す
廊下などの行く先が窓でその先に緑が見えると、広く豊かに感じます。
行き止まりを壁にすることは空間を分断していることになります。
たとえ隣地が迫っていても窓を設け、中木を一本植えることで自然な暮らしができるようになります。
外の豊かさを取り入れる
「建築とは外をどれだけ取り込むか」。哲学者もそう言います。
「i-works」は、光・風・木々・揺らぎ・音・四季の匂い、自然界に存在する気持ちのいい様々な要素をどれだけ取り入れるかに挑戦した建物とも言えます。ただし窓は無数に設けるのではなく、数を絞って大きくする。そうすると影ができ、奥行きある立体的な空間になるのです。
開口部を大きく高さを揃える
前述の通り、なるべく枠の小さく、大きな窓を選びます。室内ドアや収納扉も同じです。
メリハリをつけるために、空間を繋げるために、出来る限り製作ドアにして垂れ壁、袖壁を少なくするのもポイントです。
リビングに入る視線の先に2階吹抜けの角から空が見える |
キッチンから廊下、玄関への繋がり。建具で視界を遮ることもできる |
写真は郊外。ただ住宅密集地でも緑を植えることを諦めなければ豊かな暮らしができる |
窓、建具の高さがスッキリと揃えられている |
変更した箇所の注意
「要望通りに変更・追加したはずなのに、なぜかパンフレットと違う…」ここが規格住宅の難しさであり面白さでもあります。
経験から見ると「i-works」は”余白”を大変上手く使っています。
例えば何もない白い壁。ここにスペースがあるからと言って棚板を付けたり、小物収納を増やしたりすると「i-works」が持つ空間の完成度が崩れかねません。完成された「i-works」をアレンジするということを住まい手様が理解され、工務店が責任をもって設計施工を行うことが大切です。
外構・植栽・家具まで計画する
外構の完成度や緑の量まで決められているわけではありません。近隣状況や予算に合わせてでいいのですが、例えばパンフレットの外観が誰の目にも完成された作品のように映るのには大きな理由があります。
中高木を植える
常緑・落葉を織り交ぜて四季室内に取り込むようにします。外から見ると帰宅するのが楽しみな家、街の景観に貢献する家になっていきます。また3~5mの緑は建物が小さく見える視覚効果があります。建物を小さく見せることでフォルムは良くなり、殺風景でない可愛らしい家になります。水遣りと落ち葉の掃除は大変ですが、四季を感じて暮らすには必要不可欠な要素です。
つくばモデルの6年経過。緑が育ち建物は小さく見えてくる |
山採りの木は枝ぶりもユニークで自然体。建物とも融合する |
建物と植栽を一体で設計すると自然と呼応して暮らせる |
ソーラーコムでは、伊礼さんの設計作法に則り、大阪、奈良などの地域性に合わせて標準化した素材・仕様で「i-works1.0」「i-works3.0」の実績を重ねています。
価格は “3,200万円~”
標準仕様を少し説明しますと
- 構造:土佐材(高知県梼原産:FSC国際森林認証材)杉・桧の無垢材
- 外壁:高千穂そとん壁
- 内壁:土佐和紙
- 床板:杉無垢板(特一等)
- 天井:土佐和紙
- 玄関ドア:ユダ木工「i-works」木製引き戸
- 室内ドア:既製内装ドア
- 外装木部:桧(上小無節)無垢板、杉(特一等)無垢板
- 窓:樹脂アルミ複合断熱防音窓
- キッチン:造作キッチン または システムキッチン(どちらも仕様による)
左官塗り壁、国産無垢材、和紙などの自然素材を基本に、健康と環境に配慮した素材で仕上げていきます。
ゆたかな暮らしを実現する予算配分と仕様
前述の通り、「i-works」はゼロから細かく設計していくのではなく、プランと仕様が決まっています。
例えば工業製品を多用するのではなく、徹底的にスペースと視覚の無駄を省くために手作りで作り込みます。
建物の「部屋は広い方がいい」「収納はあればあるだけいい」という考えは止め、どうすれば小さくても広々住めるかが合理的に考えられています。小さな建物に出来ると、探す土地も、建物もそれだけ安くなります。
そこで質を上げることに注力できるのです。そこが伊礼建築の心地よさに直結する部分です。
また、毎回異なる仕様や部材をばらばらに使っていたのでは、手間とコストだけがどんどん積み重なり、家全体としての「質」の追求に至りません。厳選された素材を決った型で導入し、設計・部材・現場のコストを絞り、見過ごされてきた豊かに暮らすための外構・植栽・家具の質を高め、結果として豊かな住まいに繋がるのです。
実際にi-worksを建てるには
ソーラーコムでは2021年からi-worksを建てるための講座「i-works相談会」を開設しました。
ここでお話した価格と仕様はもちろん、オプションも含めてどのくらいの価格帯が多いのか、また皆さまの敷地条件に合わせて快適に暮らすにはどうプランニングすればいいのかなど、形式的なことではなく、実地で何が必要かというところにフォーカスしてお話していきます。
伊礼さんの実際の講演動画も使用しますので、その設計作法を理解することできます。
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