【前編】「陽の木の家」の涼しい夏がやってくる 1年目の夏
ただいま設計中のお施主様を住まい手様宅へご案内しました。昨年の12月にお引渡しをした豊中、平屋の二世帯の家です。夏の緑が美しいシーズンがやってきます。前後編の2回に分けて見学の様子を紹介します。
家じゅうに木の香り、風通しが良く、何もしなくても涼しい
玄関に入った途端に「天然の木の香りがすごーい」と感動のご見学者様。消臭効果の高い中霧島壁で仕上げることで梼原材の香りがとても生きています。柔らかな空気が流れ、生活臭はなく木の香りが漂っています。
涼しい風が通る吹き抜け空間。軽やかな壁と床の無垢材が目に優しい
窓を開けると風通しが良く、「室内の全館空調はOFFにしたままでもとても涼しい」と住まい手様も満足しておられたのが印象的でした。空気を汚さない中気密・高断熱、風通し、日射遮蔽、無垢の木の調湿のおかげで快適な空気質が出来上がっていました。
中間期には風を通し、猛暑と厳冬期には障子で涼しく暖かく暮らす |
ソーラーコムでは床・壁・天井・構造全てに無垢材が使用されるため猛暑でも家の中が涼しくべとつかない。 |
憧れのそとん壁、木の小庇
完成見学会を開くと多くの方が「陽の木の家」標準仕様に感動してくださいます。中でも外観は「陽の木の家」だとすぐにわかるのがとてもいいと言っていただけています。
調湿や割れの面でも高性能。美観にも優れた火山灰のシラスを原料としたそとん壁。この家では工業的な家づくりにしないための庇、塀、戸袋も木製で造作されていて、ここに緑が入り3色のバランスが取れています。変形の建物形状になっているので、室内からもこのそとん壁が見えるのが気持ちよく感じます。
そとん壁のスチロゴテ仕上げの凹凸は眺めるだけで癒される |
道路との高低差のためデッキは作らず、LWにも花台を増設した |
外に向けて自然素材を使うと地域に馴染む |
何よりも一枚大開口への憧れで家づくりを始めた「LW」
人は窓に集まります。人の五感が心地いいと感じる自然が窓から入ってくるからです。
その窓に引き違い特有の縦枠はなく、すっきりと絵のように景色を切り取ってくれます。
また、夜の視線回避と断熱性能を上げる障子、灯りと視線を絞るガラリ、中間期の風通しの一枚網戸、景色を堪能する一枚ガラスと、シーンで使い分けできるような工夫が定番となっています。
見学者様には木の家の「LW」を憧れだと語ってくれ、ソーラーコムとしてもこれからの設計打ち合わせが楽しみになります。
障子を使うと柔らかな灯りが室内を照らす。断熱効果も非常に高い |
網戸も一枚で引き込めるため、中間期には通風・防虫用として活躍する |
遠くの景色、空、緑は一枚ガラスにすると絵のような窓になる |
横格子の木製ガラリは視線と灯りを絞る。通風にも役立つ |
鮮やかな緑と木製花台の色合いによって、美術館で絵画を眺めるご夫婦のように映りました。
例えば照明を絞り室内を暗くすることで見たい景色を際立たせることもできる
道路面と窓に高低差があったため視線を遮ることと、転落不安を解消するために、LWに造作花台を取り付けました。室内からも木板のラインが通って雰囲気も出ました。住まい手様は通行人からの視線を気にせず窓を開け放つことができます。
花台の幕板のラインによって景色がリゾートのヴィラのように見えた |
1階LWの花台。高低差があり、ウッドデッキを作らない際にはこのような設えもできる |
木の家に合う家具
大型の家具も、雑貨も木の家に合うものを大切にお使いになられています。
昔からずっと使ってきたペンダントライト、濃いめの木で統一されたソファ・テレビ台・ピアノ。小さな籠やバスケットのような雑貨類も統一感があり、空間が整理されているため小さな部屋でも広く感じます。麻風のロールスクリーンで統一され、雑貨類と風合いが合っています。
伊礼さんのi-worksソファでもたびたび利用する生地屋さんで張り替えたソファ |
ピアノをはじめ、木の家と相性がいい家具が揃っている。長く使える良いものを少なく持つのがいい |
食卓からの眺め。キッチンの正面ではなく横にあるため対面キッチンと言えど配膳がしやすい設計 |
暖かく過ごせた冬、そして初めての夏へ
初めての冬は常時20℃運転で全館とても暖かく快適だったようです。いつも家づくり勉強会でお話していますが、家は全館空調を入れれば快適になるわけではありません。断熱・気密の程度、仕上げ、目に見えないところの素材に何を使うか、空気の流れがデザインされているかどうか、夏の日射遮蔽を考えた設計はされているか(パッシブデザインと言います)が重要です。
機械や設備に頼らない家だけが、設備の効果を100%引き出せると言い換えることができます。
夏の日差しは遮り、冬は採り込む。居間を快適にするコツです。さらに無垢材に呼吸させて湿度もデザインしていく
買い物帰りにストレスのないキッチン
対面キッチンでは3つの話題で盛り上がりました。
広めの通路が気持ちが良い
通路幅をどの程度取るかは多くの方の関心です。家族が頻繁に行き来をする、2人でキッチンに立つことがあれば1000~1200mmと広めが人気があります。キッチンに行き止まりがあれば広めの方がストレスはなく、回れる動線になっていればそこまでの広さは必要ないという方もおられます。あとは見落としがちな背面のカップボード。大きな開き扉や引き出しがあれば広めの通路が必要で、オープン棚や引き違いであれば広さは必要としません。背面のレンジ台へのアクセスを一歩で済ませるためにあえて狭くする方もおられます。
個人の感覚なのでもちろん正解はありません。
ここからは設計士の仕事になりますが、プランや構造との兼ね合いという部分も出てきます。キッチン単体で考えるのではなく、上下左右の関係を構造面での増額がないように収めていくのも重要なポイントです。
回れる動線ではあるが通路幅は1100mmとした。引き出しは取り出しやすく、住まい手様は上手く使いこなしておられた
便利な鞄の置き場
住まい手様は鞄置き場がとても助かっているとのことでした。つい鞄を食卓の椅子、ソファの上、床置きしてしまいがち。居場所を決めてあげると収納がとてもスッキリしていました。
少し脱線しますが、次のステップは毎日鞄の中身を出して、財布や小物に”呼吸”させてあげることでしょうか。決まった位置にある小物トレーに配置しておくと大切な物に愛着も湧いてきます。
鞄置き場として使っているオープン棚の足元。通路をふさがず、棚や椅子にも置かない
システムキッチンの細かな配慮
製作と既製、どちらもいい面とそうでない面がありますが、住まい手様が選ばれたのはメーカーのキッチン。さすが年中、世のママさんの声を集めて新商品を出しているだけあって、細かな配慮が助かっているようです。ペットボトルの水切りを料理本立てに使ったり、手入れしやすいのも魅力のようでした。(製作(造作)キッチンの良さは前回完成した東豊中の家で取り上げています。2022年完成「東豊中の家」完成写真&記事)
メーカーキッチンにしてカウンターは無垢板で仕上げる場合もある(写真はすべてメーカーキッチン)
余談ですが、ミーレの食洗器がなかなか納品されず、この家も入居後数か月でようやく取り付けとなりました。
以上、涼しい夏を迎えられる「陽の木の家」の暮らし、【前編】でした。
後日【後編】もまだまだ続きます!!