伊礼智 i-works&設計作法講演

  • 投稿日:2019.2.25
  • 建築家 伊礼智

伊礼先生をお招きしての講演&お話会の第2弾は実際にi-works豊中モデルハウスに身を置きながら開催しました。

伊礼さんは全国区の大御所建築家でありながら、住まい手、お客様との距離がとても近く、気さくに質問にも答えてくださり、専門用語を使わず分かりやすい話口調で、そのお人柄が作風にもよく現れています。

 

脱・注文住宅

冒頭、「注文住宅」が、人の良い工務店社長が住まい手の要望をあれこれ聞き入れ、素人の要望を詰めに詰め込んだ結果、どこかまとまりがないものになってしまっている、という話から始まりました。

これから家づくりをする夢を持った住まい手さんにとっては驚きの話。

では注文住宅ではなく、これからは何なのか。伊礼さんの答えは「提案住宅」ということでした。

伊礼さん自身が良いと思うものを提案し、それを受け入れてくれる方の家をお引き受けしたい。

その方の出す要望なら価値観は一緒だろうからそれはどんどん受け入れる。

そうでないとお互いに不幸なことが起こってしまう。

これがi-worksのはじまりであり、リーズナブルでいい住まいを提供できる。

そういったことを20年前から考えて来られました。

冒頭、建築家としてクオリティの高い家をリーズナブルに建てる考えについて語られる

伊礼先生のコンセプトを持った統一感のある提案住宅の話に参加者も熱心に聞き入る

 

部位ごとに標準化していく理由

1坪の階段、1坪の浴室、1坪の洗面、1帖のトイレ・・・という風に、部位ごとに標準化されたパーツのパターンをいくつも持って、それをブラッシュアップ。

i-worksを完成させるだけでなく、それを普段の仕事にも取り入れ、標準部分の設計や現場に関わる労力を省力化されています。

そうすることでまず削られて完成度が低くなりがちな外構・緑を植える・一生ものの家具を取り入れる、そして新しいチャレンジや提案をすることにこそ手間や費用をかけられるようになっていきます。

そして、標準化とは決して手抜きやつまらない平凡なことではなく、これまで優秀な人がやっていたことが普通の人でもできるようになるような仕組みだとおっしゃいます。

時間がかかっていたことが仕組みのおかげで解決され、新しい提案に時間が割ける、それが自分の作風となり、”らしさ”となる。

これが住まい手に対しての礼儀だということでした。

伊礼さんの家に住みたい、ソーラーコムの家に住みたい、とは日々のルーチンワークから生まれるということを学びました。


豊中の家の洗面浴室。どの伊礼さんの建物を見てもこの形から大きな逸脱はない。

 

居場所、行く先々に楽しみがある

伊礼さんも「日本建築の粋が詰まっている」と言われる京都の名旅館「俵屋」で出会った2畳の和室を、当時伊礼さんの「9坪の家」で提案されました。

昼寝をしたり読書を楽しんだり、見学会を開いても皆この2畳が可愛くていいと言ったそうです。

靴を脱いでも、洗濯をしても、移動しても、昼寝をしても、家の行く先々に楽しみがあるといつまでも家にいたくなる飽きない空間が出来上がります。

きっと9坪の家のご主人も、価値観が同じ伊礼さんの提案だからこそ受け、それに満足しておられるのだと感じました。

まさに提案住宅。

京都「俵屋」の2畳和室の紹介

定番の2畳部屋。かわいらしいプライベート空間。

チャレンジしたことも繰り返していくといずれ標準化される

 

お客様も、工務店もやってみるといいこと

お客様は「どうしたら伊礼建築を工務店に形にしてもらえますか?」と。

工務店は「どうしたら自社の設計が伊礼建築のように良くなりますか?」と。

とにかくまずは3つのことをやってみるということでした。

 

天井を低く抑える(階高も低くなる)
窓を絞る(少なく、そして大きく)
天井に照明を付けない

 

しかし伊礼さんが教えるとよく工務店が言うには、この3つが一番お客様が納得しないということでした(笑)

これは全てプロポーションが良くなることに繋がり、気持ちよく暮らせるコツなのです。

天井を抑えて、照明や家具もペンダントライトや低いテーブルやソファを使い重心を落とす。

決して無数のダウンライトや間違ってもUFO(よくある丸いシーリングライト)は使いません。

灯りが足りないときはスタンドライトや家具の下に間接を仕込んだりします。

テレビ投影のために差し棒で熱く講演いただきました(笑)

当日身を置いたi-works1.0にも天井に照明がないため、参加者も即座に実感できた

 

伊礼建築が一般にも浸透していると実感できる質問が飛び出す

「私たち素人が工務店に叶えて欲しい要望を出したとして、もしそれが伊礼設計の方向性とは違うとき、設計士はそれに気づいて止めてくれるのか?

もしそのまま受け入れられたら、結果バラバラな要望だらけの家になってしまわないか不安です」とのご意見がありました。

伊礼さんは「おそらくTTP(徹底的にパクる)をしていない工務店は気づかずに要望を受け入れてしまうだろう。

いや十中八九そうなる」と。

私たちのいる隣で質問されてしまったということで、まだまだだなぁと感じてしまったのですが(笑)、

素人目線になるとその不安も良くわかります。

とにかくそうならないように住まい手が自分で確かな要望を出せるようになることなのですが、私たち工務店としては安心して頼んでいただけるようにTTPをする必要があるということです。

 

伊礼さんファンが集まったからこその景色

当日は流行っている風邪の影響もあり、残念ながら参加できない方が数組おられました。

また上映会という形でぜひ見ていただきたい講演となったのですが、

たまたま参加された皆さまが伊礼さんの書籍をお持ちで、即席サイン会が始まりました。

こういう距離の近さや書籍以外の生で繋がりを持てる機会をつくることができてオーナーさんと伊礼さんには本当に感謝です。

画像の説明文
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本イベントの講演上映会の開催決定

この日でなければ参加できたのに…というお声をいくつかいただきました。

そこで2月末までのモデルハウスをあと少し延長して…、

3/10(日)に本講演の上映会&見学会を開催することが決定しました。

アンコール公演のような感じで、これが本当にラストになります。

講演1.5時間の盛りだくさんの内容になっていますので、伊礼さんの講演を聞きたい!という方はぜひお申込みください。

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